2022年4月から3Dプリンターコースを開講。教室では、家庭用として一般的によく使われている、プラスチック材料を積み重ねて造形するFDM方式の「CREALITY Ender3」と「ANYCUBIC megaS」を使用します。実際に使ってみなければわからない事も多いので、これから3Dプリンターの購入を検討している方に少しでも参考になればと思い、家庭用として人気の高いこの2機種を比較してご紹介します。
Ender3とmegaSを比較
機種名 | CREALITY Ender3 | ANYCUBIC megaS |
見た目 | ||
価格 | 約¥20,000 | 約¥30,000 |
本体サイズ | 44×44×46.5cm | 40.5×41×45.3cm |
本体重量 | 約7kg | 約11kg |
造形サイズ | 220×220×250mm | 210×210×205mm |
操作 | タッチパネル/英語 | タッチパネル/英語 |
接続方法 | microSDカード (カードリーダーUSB付属) | SDカード (カードリーダーUSB付属) |
概要
本体サイズや造形サイズ、操作方法は同程度ですが、価格はEnder3の方が1万円ほど安いです。
最大の違いは下の比較表にある通り、組み立てにかかる時間です。
ANYCUBICは8本のビスを六角レンチで留めるだけで簡単に組み立てられ、基本的な調整を行ったあとはすぐにうまく印刷できました。
Ender3は付属の説明書を見ただけではよく分からず、Youtubeで動画を探して組み立てましたが、4時間ぐらいかかりました。さらに、うまく印刷できるまでの調整に時間がかかり、試行錯誤してようやくキレイに印刷できるようになりました。得意な人は2~3時間で組み立てられるようです。
機種名 | CREALITY Ender3 | ANYCUBIC megaS |
見た目 | ||
組立て | × 約3-4時間 | ◎ 約15分 |
ビルドプレート(ヒートベッド) | 取り外し可能 造形物がのったままプレートを反らせて造形物を剥がせる △ 耐久性低い 傷が付きやすい | 取り外し不可 ベッドが冷めると造形物は簡単に取り外せる ◎ 耐久性高い ガラスベッドで傷が付きにくい |
予熱 | 自動予熱 | 自動予熱 |
対応フィラメント | PLA、ABS、PETG (1.75 mm) | PLA、ABS、TPU、HIPS、Wood(1.75 mm) |
フィラメント検出機能 | なし | あり |
フィラメントの 挿入、排出 | 手動 〇 ほぼスムーズに抜き差しできる | 自動 挿入時:△ 10回に1回は詰まる 止め忘れるとフィラメントが出続けて大変なことに 排出時:× 毎回必ず詰まる |
音 | 平均55dB | 平均54dB |
ビルドプレート(ヒートベッド)
ビルドプレートの上に造形物が作られますが、プレートが取り外しできるかどうかよりも、造形中に定着しやすいかと完成後に造形物が剥がしやすいかの方が大切です。
造形中に剥がれると失敗しますが、完成後に剥がれにくいと完成品を傷つけてしまうリスクがあります。
造形中の定着については2機種で優劣はなく、実感として寒い季節は反りが出て剝がれやすいので、ブリムで予防しています。
Ender3のホットベッドは「消耗品」という感じで、私の使い方が悪かったのか2~3カ月で傷が付いて汚らしくなりました。
megaSの方は特殊なガラスベッドで、冷えると造形物がすんなりときれいに取り外せるので、傷を付ける心配がありません。
予熱
Ender3を先に使っていて自動予熱の機能がある事に気付かず、予熱の温度設定をずっと手動でしていましたが、どちらの機種も自動予熱ができます。
手動で好みの温度にする場合、Ender3はつまみを回して温度設定しますが、回す角度と設定温度の上下調整具合が比例していないのが謎で、急いでいるときには少しストレスです。
対応フィラメント
どちらの機種も一般的によく使われているPLAとABSに対応しています。材料によりそれぞれ特徴がありますが、この2つは比較的取り扱いやすく、メジャーなフィラメントといえます。
フィラメント検出機能
megaSは造形中にフィラメントがなくなった場合に自動停止して、フィラメント補充後またそこから再開できる機能がありますが、あまり経験しない場面なので必ずしも必要な機能ではないと思います。
フィラメントの挿入、排出
Ender3は手動ですが、フィラメントの先を斜めに切れば、挿入時も排出時もまず詰まることはありません。
megaSは自動ですが、挿入時に自動で進んでくれるまでのところで詰まることがあります。フィラメントの切り方を工夫してもなぜかうまく入らず、試行錯誤しているとそのうち入ります。原因がわかりません。
また、自動挿入ボタンを押したあと別の作業をしていてストップボタンを押し忘れると、フィラメントがソフトクリームのように大量に出ていてビックリします。フィラメントの無駄遣いになり、もったいないです。
排出時も自動で排出してくれてるくせに、絶対に毎回詰まるので、毎回フィラメント供給チューブを抜いてフィラメントの先端を切って抜いています。とても面倒です。
音
自分の耳ではmegaSの方が少し音が大きいような気がしますが、実際に音量計アプリで計測してみると同程度でした。
目安として50dBが「静かな事務所」60dBが「静かな乗用車」ぐらいの音らしいです。確かにどちらもうるさいという感じはなく、他の作業をしていてもあまり気になりません。
ただ、音の感じがいつもと違う!と思って見てみると失敗していることがあります。
あと、Ender3は造形が完成しても静かにプレートが前に出てくるだけですが、megaSは音が鳴ってお知らせしてくれます。
比較まとめ
個人的な感想とともに2機種の違いをご紹介しました。
組み立てについては、3Dプリンターの仕組みや構造を理解するという点ではとても勉強になり、問題が発生したときにどこを調整すればいいか見当が付くようになるので、Ender3をがんばって組み立て調整したことには大きな意味がありました。でも正直、もう一度組み立ててと言われたらイヤです。
一方で、組み立てが苦手で手軽に始めたい方にはANYCUBIC megaSの方がおすすめです。
CREALITY公式ウェブサイト
ANYCUBIC公式ウェブサイト(英語)
どちらも調整次第でキレイに造形できます。環境や条件等により一概には言い切れませんが、自分の感覚としては、同じ設定で同じものを作ってもEnder3の方が積層痕が目立ちにくい気がします。
どんな3Dプリンターを使っても、設定と調整が造形物の出来栄えに大きな影響を及ぼします。
当教室では3Dプリンターコースをご受講いただけます。3Dプリンターでものづくりを楽しみましょう!